虫嫌いの人は見ないでください~最終章~
つづきを
朝、目覚めて夏休み君(蝉の名前)の様子を伺いに行ったところ、そこに彼はおらず抜け殻だけが残っておりました。
どこに行ったのか探していると、窓のさんの所にじっとしておりました。
体はすっかり蝉色になっていて、もう旅立つ準備はできているようです。
私は外に出してやろうと思い、彼を連れてきた時と同じように人差し指を差し出しました。
すると、そっと6本の手足で私の指に掴まりました。
私は窓を開けて、その指を外に出しました。外は早朝のため、少し肌寒く、まだ白く霞がかかっています。
彼はもう、すぐに飛び立てる所にいましたが、じっとして動こうとしません。
「ほら、行きなよ。」
私は急かしてみましたが、彼は全くの無反応です。そしてじっと空だけを見つめていました。
(まだ行きたくないのだろうか。)
私はそう思い、網戸にくっつけてやろうと思った瞬間、
「ビッ」
と言って薄曇りの空へと飛んで行ってしまいました。
「あ、」
私は姿を追いましたが上空へ上がって行ってしまったため、すぐに見えなくなってしまいました。
「行っちゃったなぁ」
と空を見上げていると、その時、
「ミーンミンミンミー」
と蝉の鳴き声が上(私の家の団地の屋上)から聞こえてまいりました。
それはきっと夏休み君の鳴き声だったと思います。
彼の夏は今年で終わります。
蝉は何年間もの間、土の中で生活をし、時期になると羽化をして、成虫になった後は1週間~2週間程の命といいます。その間に次の世代へ血を受け継ぐ為に精一杯生きるのです。
夏休み君も、自らのその運命を知ってか知らずか、無事に羽化を遂げて、旅立って行きました。
そして薄暗い部屋には抜け殻がひとつ。
そろそろ、夏が終わります。
おしまい
朝、目覚めて夏休み君(蝉の名前)の様子を伺いに行ったところ、そこに彼はおらず抜け殻だけが残っておりました。
どこに行ったのか探していると、窓のさんの所にじっとしておりました。
体はすっかり蝉色になっていて、もう旅立つ準備はできているようです。
私は外に出してやろうと思い、彼を連れてきた時と同じように人差し指を差し出しました。
すると、そっと6本の手足で私の指に掴まりました。
私は窓を開けて、その指を外に出しました。外は早朝のため、少し肌寒く、まだ白く霞がかかっています。
彼はもう、すぐに飛び立てる所にいましたが、じっとして動こうとしません。
「ほら、行きなよ。」
私は急かしてみましたが、彼は全くの無反応です。そしてじっと空だけを見つめていました。
(まだ行きたくないのだろうか。)
私はそう思い、網戸にくっつけてやろうと思った瞬間、
「ビッ」
と言って薄曇りの空へと飛んで行ってしまいました。
「あ、」
私は姿を追いましたが上空へ上がって行ってしまったため、すぐに見えなくなってしまいました。
「行っちゃったなぁ」
と空を見上げていると、その時、
「ミーンミンミンミー」
と蝉の鳴き声が上(私の家の団地の屋上)から聞こえてまいりました。
それはきっと夏休み君の鳴き声だったと思います。
彼の夏は今年で終わります。
蝉は何年間もの間、土の中で生活をし、時期になると羽化をして、成虫になった後は1週間~2週間程の命といいます。その間に次の世代へ血を受け継ぐ為に精一杯生きるのです。
夏休み君も、自らのその運命を知ってか知らずか、無事に羽化を遂げて、旅立って行きました。
そして薄暗い部屋には抜け殻がひとつ。
そろそろ、夏が終わります。
おしまい